都橋探偵事情『舎利』

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「時間がねがらおらから紹介する。伊勢佐木中央署の中西刑事ど沖縄南北署の渡嘉敷刑事だ。全面的さ協力すてける。仲良ぐやるように」  紹介された二人はその場で一礼した。 「先ずは鈴木鑑識課長がらアドバイス受げる」  鈴木が立ち上がり前に出た。 「みんな驚がねで聞いでけろ。既さ手榴弾はホスの手中にあるど断定すていい。手榴弾沖縄がらパインの缶詰さ入れで運んだど思われる。沖縄南北署の調べでは殺されだ武器密売人の倉庫にあったそうだ。それど同ずなら米軍性のM26,通称レモンど言う手榴弾だ。缶詰二缶あるごどがら二発たがぎ歩いでるど考えだ方がいい」 「何が質問ねが?」  若い警官が手を上げた。 「威力はどうですか、どれくらい離れれば助かりますか?」 「五人で輪作りその中心で手榴弾爆破さしぇだら五人共死ぬ。いがにわらわら逃げるごどだ。逃げ切れねど思ったらうづ伏しぇに寝そべるんだ」  別の警官が手を上げた。 「ホシが手榴弾を投げてからどれくらいで爆発するんですか?」 「安全ピン抜いでもジャングルクリップで制御されでる。握ってジャングルクリップ外すて握り放すてがら、4秒時間差がある。その間にいがに遠ぐまで逃げるがだ」 「二発同時に爆破は可能ですか?」 「恐らぐ無理だ、片手で一連の作業は不可能、両手にたがいででも片方ずづすか爆破出来ねべー」  手を上げる者がいない。 「よす、武器の説明はいいな、おらと鈴木は戦場で実際さ経験すた。どれだげおっかねがよぐ理解すてる。いいが、鈴木のアドバイス肝さ銘ずで行動とるごど。ほんじゃ作戦会議さ入る。ホスはタクスー運転手金城孝、八百屋店員名城豊、そすて職業不詳小川誠二、この三人共犯で、三人ども行方分がらね。一連の行動探って、小川誠二主犯である可能性大だ。恐らぐ単独行動とんべ。ホスの狙いは佐々木だ。先さ殺されだ斎藤嗣治の上官だど思われる。テニアン島で何があったが、それは分がらね。深読みす過ぎでも事件解決には至らね。おらだはいがに手榴弾の被害最小限さ食い止めるがに努めるごどだ。勿論我等の誰一人怪我しぇずに解決図る。ホス斎藤嗣治宅さ追い込む。追い込んで宅囲む。いいな?」  その先は高橋本人も未知である。中には斎藤の妹や兄が居残っている可能性が高い。ホシが佐々木だけを狙うと言う性善説に縋るにはあまりにもお粗末である。道連れにするのを厭わないだろう。
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