都橋探偵事情『舎利』

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「俺が坊主に見えるか?」 「空海も頭下げるさ」 「それより拳銃だな、どこに付けるかだ」  一早く抜いて撃たなければならない。それも一撃でなければ手榴弾が先に破裂する。 「袈裟に細工するか?」 「ああ、ダブついた内側に引っ掛かるようにしてくれると助かる」  手芸の得意な婦警に細工を施してもらう。実際に拳銃を差し込む。中西が小川役、手榴弾代わりのホチキスを握った。さっと抜いて中西の胸に拳銃を押し付けた。 「さすが早いな」 「すいません。もう少し下げてくれますか?」  渡嘉敷が婦警に指示する。 「よし、西、いいぞ」  中西が手榴弾を出した。さっきより早く拳銃を押し当てた。 「一秒切ったな。この通り行けば奴がグリップを放しても3秒ある。その隙に隣の部屋に飛び込める」  二人は繰り返し練習した。様々なシチュエーションを仮定した。飛び込んで来たら即射撃する。能書きを垂れたらこれも即射撃。佐々木を人質を取られたらならやはり即射撃、佐々木に当たるかもしれないがそのリスクは承知。 「兄や妹が人質となればどうする?」  渡嘉敷が中西に問う。 「それでも撃て」 「撃つのはいい、手榴弾が破裂するぞ」  答えが出ない。17:20. 「そろそろ時間です」  若い警官が二人を呼びに来た。 「高橋班長はいるか?」 「はい、本部室におります」  中西は高橋の元に詰め寄った。  
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