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「夜回りの一人消えだ。蓑付げだ百姓風の男だ」
佐藤刑事が中西に知らせた。
「入ったのか?」
「恐らぐ」
後手を踏んだと唇を噛んだ。
「騒ぐな」
「はんにゃ~・・・」
読経が止んだ。小川は斎藤の妹に後ろから忍び寄り首を腕で抱えて立ち上がらせた。左手にはジャングルクリップを外してある手榴弾を握っている。握りを解けば爆発する。
「坊主、読経を続けろ。読経を止めたら爆破する。おい、お前は外に出ろ。警察がいるだろうからこう伝えろ。佐々木を連れて来いと」
斎藤の兄に指示した。
「はんにゃ~は~ら~ ]
渡嘉敷は右手に数珠、左手に経典を開いている。
徳田は警察の動きを見てホシが中に入ったと悟った。
「お嬢さん」
もめている二人の前に出た。
「あなたは」
「行かせて上げなさい」
徳田は恵美子を後ろから羽交い絞めにした。
「恵美子、幸せになるんだよ。ありがとうございます」
「お父さん」
佐々木が斎藤宅の玄関を開けると中から斎藤の兄が出て来た。中西が駆け寄った。
「どうしました?」
「犯人が佐々木を連れて来いと騒いでいます。妹が抱え上げられています。助けてください」
斎藤兄が中西に祈るように手を合わせた。そこへ佐々木が現れた。
「佐々木さんですね、さあどうぞ、お入りください。坊主は警官です。指示に従ってください」
中西が佐々木が入ると同時に忍び込んだ。ベルトには匕首が差してある。
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