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「ふざけるな、お前が玉砕したなら俺達の感情はここまで高ぶらなかった。お前と斎藤が帰還してのうのうと生きていることを知り俺達の復讐心に火がついたんだ。俺達の家族はお前達に殺された。捕虜になればアメリカの温かいスープを飲ませてやることが出来た。全て失っても、また家族で生きることが出来た。その悔しさはお前を殺さなければおさまらない。お前を殺し俺も死ぬ。テニアンの精算だ」
小川が洋子を放せば渡嘉敷はいつでも撃てる。しかし前に抱かれたままでは小川の頭以外に的はない。手元が狂えば洋子の頭をぶち抜いてしまう。
徳田が斎藤宅の玄関に寄った。
「おめは誰だ?」
佐藤刑事が徳田を押さえた。
「ホテルから行方を眩ました者だ」
佐藤は徳田の服装を見て斎藤洋子に近付いた怪しい男と想い出した。
「放すてけれ、その人は関係ね」
高橋が指示した。
「おめは探偵らすいね。小川捜すてだんだべ?」
「ああ、だが依頼人を殺された。もう仕事から離れてしまった。今は一人の男として佐々木の娘を救いたい」
「ほんじゃ黙ってこごがら離れなさい。それが一番おめの希望さ近付ぐ」
徳田は頷いた。佐藤が手を放した。歩き出した。
「気つけでな」
「あっあれはなんだ」
徳田が路地の外れを指差した。高橋と佐藤が玄関から離れて路地に出た。その隙をついて徳田が玄関に走る、ドアを開けて中に入り込んだ。
「あの野郎、騙すやがって」
佐藤が地団駄踏んだ。
「仕方ね。二人の応援さ任しぇんべ。周囲立入禁止にすろ」
米沢東西署総出で警戒する。
「よす、おらも入る、さどう、ホス逃げだら撃ぢ殺しぇ」
高橋は銃を確認して中に入る。
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