都橋探偵事情『舎利』

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「お父さん、もう駄目、手を放してしまいそう」  恵美子は細い声で言った。 「よし、坊主出て行け、お前の役目は終わりだ。葬儀は頼むぞ」  渡嘉敷が立ち上がった。一同に一礼した。歩き出した。袈裟に仕舞った拳銃を抜いた。振り向いて発射した。小川の頭を掠めた。佐々木が恵美子の手を握った。中西が飛び込んだ。小川が手榴弾を握った手を突き上げた。洋子が駆け出す。中西が匕首を一閃小川の腕を切り落とした。高橋と渡嘉敷の拳銃が小川に命中する。落ちた腕は手榴弾を握っている。中西がその腕を掴んだ。 「こっちだ、早く」  徳田が佐々木親子と洋子を玄関に走らせる。玄関を出て恵美子が転んだ。佐々木の手が恵美子から離れた。 「走れ」  徳田は叫んだ。そしてステッキで手榴弾をホッケーのように転がした。うつ伏せてソフトを後頭部にずらした。爆発した。 「救急車」  待機していた救急車が横付けされた。 「殺せ、年が開ける前に殺せ。何時だ?」  切り落とされた腕からは大量の血が流れている。銃弾も6発撃ち込まれている。 「23:55分だ。どうして今年中に死にたいんだ?」 「キリを付けたいんだ、何もかも今年中に」  除夜の鐘が聞こえる。 「西連寺の鐘だ」  高橋が言った。小川が懐からお守り袋を掴んだ。
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