都橋探偵事情『舎利』

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「開けてくれ」  中西が中身を出した。人骨である。 「口に入れてくれ」  小川が薄っすらと口を開けた。中西は一片を掴んで小川の口に入れた。小川の目から大粒の涙が零れ落ちた。そのとき切り落とされた手が開いた。 「逃げろ」  高橋の号令で三人は隣の部屋まで走りうつ伏せた。爆音と共に天井に穴が開いた。 「西、西」  爆音がして徳田は止める救急隊員の腕を払い家の中に走った。泥壁が崩れ落ちて家中の埃が舞い上がり霧が掛かっているようである。 「西、西」 「踏んでるよ。俺の背中踏んでるっつうんだよ」  足元から声が聞こえた。三人が起き上がった。お互いの怪我を確認し合っている。 「みんな、大丈夫そうだな」  高橋が声を掛けた。中西が笑った。渡嘉敷が頷いた。 「心配して損した」  徳田が愚痴を吐いた。舞っていた埃が床に収まった。小川はバラバラになっていた。中西がお守り袋を拾った。 「テニアンで死んだ家族の舎利だろう。八丈の弟に持って行ってやろう」  中西がお守り袋をコートのポケットに入れた。  外に出ると年が明けていた。 「無事か?」 「全員無事だ。おめ等は?」  高橋の問い掛けに鈴木が答えた。
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