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「ゴミ屋敷ど言われでだそうだ」
鑑識課の主任が言った。
「身元は割れだが?」
「はい、斎藤嗣治、48歳」
「家族は?」
「独身だ」
「独りだって産んだものがいんべ?兄妹は?」
高橋は佐藤の答えが気に入らない。
「隊長、大家が来ました」
高橋は一旦庭に出た。
「なすてこだなこどになったんだが?」
大家は台所がある平屋部分の屋根が抜け落ちているのを見て嘆いた。
「賃貸契約書はたがいで来てけだがな?」
佐藤が大家に訊いた。大家は頷いて差し出した。
「隊長、保証人は妹だ」
「よす、すぐに連絡取れ。どごだ?」
「新庄だ。電話すてみます」
高橋がハンチングを脱いで大家に一礼した。
「どだな感ずの人ですたが?斎藤さんは?」
「話すたごどはね。契約の時さ会っただげだ。必要書類も妹さんが記入すていますた」
「ゴミ屋敷ど近所で評判だげど大家さんに苦情はねがったが?」
「観での通りで敷地内さゴミあるげど外には一切ね。生ごみんねがら臭えはね。他人さ文句言われる筋んねだべ」
確かに大家に一理ある。敷地内にがらくたが重なっていても他人に迷惑は掛けていない。生ごみらしきものはなく臭いも発しない。景観だけが損なわれるだけである。
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