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中西は渡嘉敷の坊主頭を撫ぜた。
「敏、お前をこんな格好にさせて悪かった。一か八かの策だった。でも生きていて良かった。死んだらお前のお袋を一生面倒看るつもりでいた。許してくれ」
中西が渡嘉敷に詫びた。
「外した、眉間を狙ったが外した。それよりお前の居合は凄いな」
「お前の一撃が耳を掠ったから小川は横を向いたんだ。だから結果オーライだよ。運も腕の内だ」
二人が話し込んでいると高橋と鈴木が寄って来た。
「頑張ってけだな、どうもありがとう」
高橋が二人の手を交互に握り締めた。
「高橋班長がぶれずに斎藤宅に小川を追い込む作戦を決行した、それが成功したんですよ。ありがとうございます」
中西が握り返した。
「課長指名手配する案出すた時、正直言って迷った。んだげんとおめ等二人のまなぐ見で、これすかねど決めだんだ。おめ等下向いでだら自信は崩れでだよ」
「鑑識課長の嗅覚は犬並ですね。鑑識課長がパイン缶を見抜かなければ後手に回っていました」
中西が鈴木に敬意を表した。
「いやあ偶然だよ、おらだはパインなんてあまり食わねがら覚えでだんだ。でもみんな無事でよいっけ。ホス自爆すたのは仕方ねだべ。第三者ば巻ぎ込まずに終えだのはうぢの高橋班長の英断だべ」
鈴木が手を出した。高橋がそれを握った。渡嘉敷が手を被せた。最後に中西が大きな手で包んだ。
正月二日の羽田空港は賑わっていた。坊主頭が空港ロビーを歩いている。
「おい、敏」
トレンチコートを翻して大きな男が空港ロビーを走って来た。
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