都橋探偵事情『舎利』

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「家賃の滞納どが、何が問題起ごされだりねがったか?」 「なんもね」  大家は即答した。斎藤は10年間居住している。ゴミ以外に全く問題はない。 「契約更新は二年さ一度だべ?」 「それも妹さんが来られでますた」  手続き事は全て妹が熟している。 「こだなこど聞ぐのは失礼だげど斎藤さんに障害はねがったがな?身体でも脳でも」  大家は考えた。考えると言うことは一見では判別出来ない何かがある。手とか脚とかなら即答出来るである。 「人見知りは病気がな?」 「それは?」 「ずっと恥ずがすそうにすてだ。脳さ障害でもあるのが心配すたげど取り越す苦労だった」  相当の人見知りであることが窺える。高橋は後日伺うと約束して大家を帰した。 「班長」  鑑識課長が厨房から呼んでいる」 「どうすた?」 「これ見でけろ?」  木椅子は居間に飛び散っている。椅子の背にネクタイが結わき付けてある。二人は顔を見合わせた。 「こだなとごにネクタイ結わぐが?」 「物好ぎもいんべ」  鑑識課長の疑問を受け流したかった。二人は同期である。
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