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「手榴弾の名称ですね」
「アメリカ製だろ?」
「はい」
「やっぱり、あいつ等が付けそうな名前だ。原爆がリトルボーイだぞ、ふざけやがって」
中西が腹を立てている。
「となると沖縄やくざが本命だな、被害者は筋もんか?」
「いえ、無職です」
「大変だな米沢。俺等は帰りましょうよ布川さん。根岸屋でも行きますか」
中西が布川の袖を引っ張った。
「いや俺は今日女房と約束がある」
中西に付き合えば財布が空になる。五回に一回程度の付き合いにしている。
「また、情けないことを。それでも俺等の班長ですか?大学出の横田君にも社会勉強させなきゃなりませんよ。ザキの裏表を叩き込んであげましょうよ班長」
相馬課長が軽く手を上げて退席した。
「課長はどうです?」
中西が追い掛けて肩を揺すった。相馬は札入れから一万を出した。
「これで勘弁してくれないか」
「まあいいでしょう今日のところは」
その隙に布川が部屋を出た。
「班長、班長」
中西から逃げることは叶わなかった。翌朝まで付き合わされた。
「班長、奥方をお大事に」
中西のトレンチコートが北風に煽られ翻る。伊勢佐木モールに飾られたクリスマスツリーに小便をしている。
「やばい、横田君、路地曲がって帰るぞ」
二人は恥ずかしくて逃げた。
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