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「これからお会いしたい。こちらの都合ですが持ち案件が解決したのですぐに黒木さんの依頼に取り掛かりたい」
糸口が掴めた。山形まで行かなければならない。経費として半額だけでも欲しい。黒木と横浜西口の喫茶店で待ち合わせをした。徳田は紙面を切り抜いてコートのポケットに入れた。
「コーヒー、黒木さんは?二つ」
注文してすぐに切り抜きを広げた。
「これは?」
「今日の朝刊です、地方紙を除く全てに掲載されていました」
黒木は新聞が切れるほどに手を引っ張っている。
「間違いありませんか、対象である小川誠二さんに関連する方のお一人に?」
「間違いないと思います」
「顔写真も人相書きもない。ただ姓名と年齢と無職と言う情報だけで特定されていますが断定出来る証はなんです?」
コーヒーが運ばれた。
「手榴弾の破片がある。それが斎藤嗣治だと言う証明です」
黒木は砂糖を入れた。掻き回すスプーンが震えてカチカチとカップの縁を叩く。
「まだ断定されたわけではありません」
「間違いありません」
黒木は繰り返した。
「この事件に小川さんが関わっていると思うのですね?」
黒木は頷いた。拳を握り悔しそうな表情をしている。
「山形に行って来ます。それでなんですが」
黒木はコートから封筒を出した。徳田は数えると全額の25万が入っていた。
「移動費は別途となります」
後で面倒にならないよう伝えた。
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