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「小川、大丈夫か?」
金城が心配する。
「それより新聞見たか?」
小川はこの電話をするまで一歩も外に出ていない。斎藤を殺すためだけに借りたアパート、テレビもラジオもない。新聞でどういう報道をされているか聞きたかった。
「手榴弾殺人事件て騒いでる」
「それだけか?」
小川は骨のことが気になった。斎藤の口に詰め込んだ弟の骨の欠片。
「ああ、他殺か自殺かもまだ判明していないような感じだ」
金城が小川の不安を解くために楽観的に伝えた。
「そうか、明後日帰る」
小川は斎藤嗣治の居場所を見つけて米沢にやって来た。郊外にアパートを借りて二カ月間斎藤の行動を監視した。週に一度スーパーに買い出しに行く。水曜日が多い、その理由は妹と待ち合わせをしていたからである。その帰りにがらくたを持ち帰る。乗り捨てられて錆びた自転車や電気器具が多い。それを家の周りに投げ捨てる。
「小川、朗報だ」
「どうした?」
「佐々木少尉が横浜にいる」
「ほんとか?」
「ああ、昨日見つけて今日名城と二人で確認した」
「そうか、本命だな、名城はそこにいるのか?」
「ああ代わる」
「もしもし」
「名城か?伯父さんにレモンを欲しいと言ってくれ」
名城の伯父は沖縄で名の知れたやくざの親分だった。本土のやくざが攻め入った時も先頭に立って戦った。彼等の滞在する旅館に手榴弾を投げ込んで二人が死んだ。
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