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「口をあけろ」
斎藤の口に放り投げてガムテープで封じた。
「それは洞穴の中で俺の手の中で死んだ妹の骨だ。お前を地獄の底まで連れてってくれるさ。洞穴で死んだみんなの弔いだ」
手榴弾のジャングルクリップを外した。安全ピンを抜いた。安全レバーの握りを離せば作動する。小川も震えた。モゴモゴと騒ぐ斎藤が立ち上がった。蹴飛ばすと椅子ごと倒れて亀みたいに仰向けで足をばたついている。遅くても4秒で爆発する。侵入した窓まで3秒かかる。小川は少しでも近い位置に移動した。
「佐々木も直に会いに行くぞ。地獄で待ってろ」
手榴弾を転がした。足をばたつかせる斎藤の左側で止まった。小川は走る。窓から飛び降りた。爆発した。布団が滑り仰向けに倒れた。立ち上がりレンタカーに急ぐ。爆音で近所の灯が点灯した。雪が降り出した午前3時だった。
米沢から全警察署にファックスが届いている。被害者の胃袋に人骨が入っていた。子供のものとみられる。その一片以外は現場では未確認。骨は噴門の辺りにあり飲み込んだばかりと考えられる。米沢東西署ではホシが飲み込ませたと推測してる。
「骨を飲み込んでいるらしい。いやホシが強要して飲み込ませたと米沢東西署の見解だ。なおマスコミにはオフレコらしい」
相馬課長がファックスを読み上げた。
「骨?」
「ああ、子供の骨らしい」
「大変だな山形の百姓も、手榴弾だけでも手に負えないって言うのに人骨まで出ちゃって、同情しますよ」
中西は人の苦労を笑い飛ばした。関係ないから他人事である。
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