都橋探偵事情『舎利』

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「おい、門番」  中西は銃を担いだ衛兵に手招きした。衛兵はガムを噛んで笑っている。 「おい、門番、俺達はこう言うもんだ」  中西が手帳を翳した。 「ワッツ?」 「ワッツじゃないよばか野郎、お前じゃ駄目だ、偉いのを連れて来い」  日本語は通じない。横田が衛兵に英語で話した。 〔手榴弾を使用した事件が発生しました。その手榴弾はレモンと愛称の米国製です。当キャンプで紛失事故等がなかったか捜査していますのでご協力願いたい〕  衛兵が頷いてゲートで電話をしている。 「カモン」  衛兵が腕を振った。 「カモンてこの野郎ガキのくせしやがって」  偉そうな衛兵に腹が立った。 「中西先輩、郷に入れば郷に従えですよ」  横田に諭された。 「お前英語はペラペラか?」 「ええ得意でした。大学出てから使ってなかったんですが通じましたね」  横田は嬉しそうに言った。 「よし、俺の質問を訳してあいつ等に伝えろ。俺の表現を変えるなよ」   横田は笑って頷いた。そのまま訳せば追い出される。狭い一室に案内された。 「ちっきしょう、こんなカビ臭いとこに押し込みやがって、やっぱり負けちゃ駄目だな。そもそも勝てる訳ねえよな、アメリカとソ連と中国だぞ、面積足したら日本の何倍になるんだ。失敗だったんだやっぱり。それに散々悪い事したからそのツケを俺等が払ってんだな」  
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