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「ばかやろう」
傍に居た労務者に八つ当たりした。転んで距離は縮まった。制服警官も追い付いた。
「先回り、福富町西公園」
中西が警官に叫んだ。警官は二手に分かれた。案の定公園に入った。吉田町から警官一人が走り寄る。大岡川沿いをもう一人の警官が走る。赤シャツは公園の中央で迷う。福富町西通りに走る。中西が赤シャツを正面から迎える。赤シャツが砂場に入った。中西が後ろから飛び付いた。まるで猛禽がウサギを掴まえたような状況になっている。中西が襟首を掴んで顔を砂に押し当てる。
「つ・か・ま・え・たっつうの」
赤シャツは砂で息が出来ない。髪を掴んで頭を持ち上げた。
「お前どこのどいつだ?やくざかそれともただのツッパリか?」
身体を振って離れようともがくが中西の手は赤シャツの首をしっかりと掴んでいる。
「暴れるとこうだ」
足払いで倒しまた顔を砂に着けた。苦しくてもがく。一旦頭を持ち上げると荒い息継ぎで砂を吸い込んで咽た。
「ありがとうございます」
警官二名が合流して手錠を掛けた。
「何やったのこのあんちゃんこは?」
「はい、高校生からカツアゲをしていました」
「高校生から?情けねえ奴だなおめえは、どうせなら銀行狙えよばか野郎。それでいくら?」
「はい、一人から百円ずつ取り上げていました」
中西は額の低さに腹が立った。首を締め上げてリフトした。
「てめえ、百円でこんなに走らせやがって、うりゃ」
リフトしたまま投げ捨てた。
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