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マイケルが上半身を起こした。中西は胡座をかいた。マイケルが手を出した。
〔お前なかなかやる。今日のところは許してやる〕
「何だって?」
「友達になりたいと」
横田は当り障りがないよう訳した。
「調子のいいやろうだ」
そう言って額を指で押した。マイケルは眉を吊り上げて中西と横田を交互に睨んだ。横田は親指を立てて微笑んだ。
「まあ許してやろう、そうか、俺とダチになりたいのか?よしいいだろう、今夜一杯奢ってやる。酔っ払ってグダ巻いたら承知しねえからな、ばか野郎」
マイケルの頭を平手で張って笑った。
〔カモン〕
衛兵が呼んている。
「西さん行きましょう」
横田は再度マイケルが暴れる前に中西を連れ立った。
「みんな、よく聞け、ベトナムの敗北は君等のせいじゃない。上のポンクラのせいだ。日本もそうだった、クヨクヨせずに早く国に帰って第二の人生を歩め、グッバイ」
「さあ急ぎましょう、大尉が待ってます」
演説ぶる中西の腕を引っ張った。マイケルだけじゃなくアメリカ海兵隊を敵に回したらえらいことになる。
さっきとは別室に案内された。兵隊は勝手に入れない、二人が捕まらないように気遣ったのだ。
〔お気遣いありがとうございます〕
横田は大尉の配慮に感謝した。
〔君はクレバーだ。次は君一人で来てくれ〕
大尉は軽いジョークで中西にウインクした。中西が顔を突き出して派手なウインクで返した。
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