都橋探偵事情『舎利』

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 米沢の手榴弾殺人事件現場は昨夜の雪で真っ白になっていた。家に向けて山なりになっているガラクタが見事な傾斜を見せている。 「みんなで雪かぎだ」  米沢東西署の高橋班長が号令を掛けた。各々がスコップを持ってガラクタの上の雪を掻いている。気温が低くても雪かきは重労働であり、防寒着を脱いでも汗が噴き出る。雪の下はガラクタだからスコップがカチカチと音を立てて手が痺れる。 「あの窓ガラスは爆風で割れだのんねな」  手を突っ込んでロックを解除出来る一部だけが割れている。そして開けっ放しである。 「これは何だ?」  ガラクタの上に花柄の布団が敷いてある。 「花柄の布団だね、掛布団だべ」  佐藤刑事が答えた。 「それぐらい見れば分がる。なすてこごさあるんだが聞いでんだ」  高橋が一喝した。 「干すてだんだがね」 「雪の日さ干す馬鹿がいるが」 「音消すに使ったのんねだべが」  鈴木鑑識課長が言った。 「音消す?」 「ああ音消すだ。さどう、おめ歩いでみろ」  鈴木に指示されて佐藤は布団の上を歩いた。 「そのまま窓超えで部屋さ入れ」  佐藤は窓枠に手を当てて中に浸入した。高橋と鈴木は頷き合った。 「寝室の布団見でみろ、大概上下揃いのはずだ」  高橋も後に続いて部屋に入る。寝室は壁の一部が爆風で破れているが部屋には被害がない。
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