都橋探偵事情『舎利』

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「すいません、もうしません」  赤シャツが泣き出した。 「お巡りさん、前科が付くような処分は俺に免じて許してやってよ。まだチンピラデビューしたばかりのガキだ、前科付くと立ち直れない。いくらぶっくらかしてもいいからさ」 「分かりました」  赤シャツの手錠を外した。 「おいあんちゃん、今度見つけたらただじゃおかねえぞ、いいな。これは貸しだ。俺等に返さなくてもいい。年寄りにやさしくしろ、いいな」 「はい、すいません」 「名前とヤサだけは控えておいて」  警官に敬礼して歩き出した。伊勢佐木町通りに戻るとソフトを拾った女が喫茶店で待っていた。通りを行ったり来たりしている中西を呼び止めた。 「ここよここ」 「おう、そんなとこにいたのか」  中西は女の後に続いて店に入る。 「ありがとう。これ気に入ってんだ」  ソフトを受け取るとクラウンをはたいた。 「あんた刑事?」 「ばれたか?」 「だって警官と一緒に昭を追ってたでしょ」 「何だあのチンピラを知ってんのか?」 「捕まったの?」 「そりゃそうだ、恐喝の現行犯で二年は臭い飯食う」  中西は脅かした。女が泣き出した。意外と泣き声は高い。客の視線が集まる。
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