66人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
「いい男ねえ、ママの好み」
これ以上の情報収集は不可能かもしれない。徳田はラークのマイクを切った。
「洋子、ほらママにお客さんを紹介して」
「お兄ちゃんの友達で弔問に来てくれたんです」
「あらそうでしたか、それは失礼しました」
洋子の遊び友達と信じていたママは事情を知り態度を変えた。
「いえ、献杯してたところです。ママもどうです」
「それじゃいただきます」
洋子がヘネシーで薄い水割りを作ってママに差しだした。氷が無くなり洋子が席を立った。
「あの子はお兄ちゃん子だから」
「そうみたいですね」
「ずっと面倒見ていたのよ。自分の贅沢は我慢してね。いつも同じ服装だからあたしが上げるのよ。でもいい子よ。お客さんには人気があるの、うちの店には欠かせない子」
「お兄さんに会われたことはありますか?」
「一度面接に連れて来たのよ。ボーイを募集していてね。でも馴染めなかった。うちはOKしたんだけど本人はそれ切り来なかった」
面接をしたと言うことは履歴書はないだろうか。
「履歴書は持ってこられたのですか?」
ママは徳田の質問に首を捻った。
「実は故人の知人を捜しております。生前親しい人や世話になった人の手掛かりが掴めないかと思いまして」
「あると思うよ。ちょっと待って」
ママがフロントで話している。洋子が戻って来た。
「ママ、面白いでしょ?」
「ああ、いいママだね。君のことをすごく大事にしている」
洋子が照れて笑った。
最初のコメントを投稿しよう!