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「よし、任せる。お前は英語が得意だからしっかり聞いてこいよ」
布川がやって来た。
「何か掴めたか?」
「ベトナム帰りが隠し持って帰った小型の火器をブローカーを通して売り捌いているらしいです」
「それぐらいは察しがついている」
布川に一蹴された。横田は手柄と報告したが的が外れた。
「すいません」
「根岸住宅に行ったらその先を聞き出してこい。噂でも何でもいい、英語じゃなきゃ通じない何かがあるわけだ。それはお前にしか出来ない。いいな」
「はい」
「そうかあいつ」
布川が閃いたように掌を叩いた。
「どうした?」
課長が閃きの内容を聞きたがった。
「いや、なんでもありません、そうか、それで」
もったいぶるが答えない。
「おいおい、そりゃねえだろう」
課長が急かす。
「ちょっと行って来ます」
布川は明かさずに署を出た。
「ちきしょうあの野郎、消化不良を起こすな」
課長は布川の後ろ姿に愚痴を溢した。布川は中西が根岸屋に行ったわけを閃いたのである。根岸屋は米軍も出入りしている。どちらかというと荒くれものが多い。今は減ったが娼婦が出入りしていた。その娼婦目当てで飲みに来ている。蛇の道は蛇の例えのごとくである。
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