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「こいつにやられた。お前も見せてみろ」
マイケルがハイネックを捲った。中西が立ち上がってじっくりと見た。
「目立たねえなあおめえは、そう言うところがラッキーだな、ユーアーラッキーボーイ」
失礼極まりない応対だが中西には相手がそれを許してしまう天性がある。布川は伊勢佐木中央署をまとめるのは中西をおいて他にいない。それも早い方がいいと考え始めていた。
「サンキューマイケル。ノーマネー、全部ミー。OK全部ミー」
マイケルは親指を立ててテーブルに戻った。
「それでコザックダンスに見合う話は聞けたか?」
「ベトナム帰りで退役した男が武器ブローカーをしているようです。さっきホールで踊っていた白人がベトナムで一緒だったらしいです。氏名も確認しました」
お道化ていた中西は消えていた。これが刑事の顔と布川に見せ付ける。
「そうか、さすがだな。すぐに米沢に知らせてやろう」
「分かりました。俺が行きます」
中西は立ち上がった。レジには寄らずに出て行った。
チェックアウトを済ませた。
「電話が掛かって来ると思う。カフェにいるから声を掛けて欲しい」
フロントの男に伝えた。客用に用意されている新聞を全紙持ち込んでコーヒーを注文した。斎藤洋子は朝一番に警察に行くと言っていた。少なくとも二時間は質問攻めにあうだろう。徳田のことも喋るかもしれない。待ち合わせをしていると言えば同行も考えられる。正体を明かすかそれとも消えるかどちらにするか迷っている。正体を明かせば洋子は失望するだろう。よくもまああれだけの嘘が吐けたものだと逆に感心するかもしれない。フロントの男が徳田を見ている。徳田はレジで精算した。胸に親指を差すと男が頷いた。
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