66人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
「10分ほどでいらっしゃいます」
「ありがとう、ところでイブは楽しんだかな?」
「散々です」
フロントの男は笑った言った。愛想のない女がフロントに入った。挨拶もない。
「これですから」
男が小声で言った。
「そのうちいい事あるさ」
徳田は外に出た。雪は止んでいた。ロビーに居ては警察動向だった場合逃げ場がない。辻を曲がりラークを咥えた。タクシーが来たので止めた。
「運ちゃん、連れが来るかもしれないから五分ほどこのまま待って欲しい。これ少ないけど手数料」
運転手に千円を渡した。運転手は礼を言って受け取った。タクシーからホテルは見えない位置である。徳田は降りて斎藤洋子を待った。洋子一人ならタクシーはそのまま帰す。
パトカーの後部座席には斎藤洋子と米沢東西署の高橋刑事が同乗している。助手席には相棒の佐藤刑事である。一方通行路をホテルの前で止まった。佐藤刑事が先に降りて洋子が乗る後部座席側のドアを開けようと急いだのが悪かった。アイスバーンで転倒した。高橋が大笑いしている。洋子が自分でドアを開けた。
「大丈夫ですか?」
佐藤は防寒着に付着した雪を払いながら頷いた。洋子を先頭にホテルに入る。
徳田はタクシーに乗り込んだ。まさかパトカーで来るとは思わなかった。担当の刑事と二人なら事情を話してもいいかなと動揺していた。パトカーで来ると言うことは署に連行して事情聴取を算段している証である。警察は藁をも掴む気持ちでいるに違いない。依頼の対象である小川誠二。依頼人の黒木は手榴弾で小川であると確信していた。殺人事件と関係があるのだろうか。徳田はタクシーの中で考えた。
最初のコメントを投稿しよう!