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「部屋はチェックすたのが」
「はい、私が今行って戻ったところです」
「電話貸すてけろ」
女がテーブルにドンと電話を置いた。
「おめ、犯人隠匿罪で逮捕するぞ、着替えで待ってろ」
高橋は脅したつもりだがフロントの女は本気にした。泣き出してしゃがみ込んだ。
「許していただけないでしょうか?」
男が哀願する。高橋は面倒臭くなった。
「もすもす、米沢駅さ逃走、まだ間に合うがもすれね。黒いコートさ黒いソフト帽、そう、探偵みだいなかっこすてる。年齢は30代、名前は山田次郎、偽名の可能性あり。わらわら手配すろ」
洋子から東京から来た男と聞いている。米沢駅から山形線で上ると決めつけての手配となった。
佐藤が鍵を開けた。
「注意すろ」
高橋が声を掛ける。それらしきものは見当たらない。
「ラークなの吸いやがって百姓」
佐藤が吸い殻を摘まんで言った。
「百姓はおめだべが」
高橋は拳銃を仕舞った。二人はフロントに戻った。
「一体どういうことなんですか?」
洋子が高橋に言い寄った。
「いや、仕事の一環だ。お気になさらねでください」
「仕事の一環て、そんなこと一言も話してくれなかったじゃないですか。あの人は兄を偲んで来てくださった。兄が生前親しかった方を捜してくれています。こんなことしたらあの方はもう来ないかもしれない」
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