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「お気持ぢは分がるっす。おめは騙されでる可能性強い。そう判断すて同行すた。結果正解ですた。おめだげなら危険だった。分がって下さい」
高橋は行動に誤りはないと信じている。
「そんな人じゃありません。親身になって心配してくれました」
「おめも分がらね人だ。だらなすて逃げだ。素性ば明がすてければ疑いも晴れる。恐らぐ近ぐでパトカー見でで逃走すたんだ。犯人でねぐでも関係があるど考えるのが筋だ。手榴弾で人ば殺す男だ。関わる者は全で疑って掛がるっす、それが捜査だ」
高橋に説得されてそうかもしれないと感じ始めた。そう思い始めると徳田の行動全てが怪しくなる。
「刑事さん、あの人そう言えば、私が兄宅で献花しているといつの間にか隣に並んで手を合わせていたんです。それに店で兄の履歴書を見ていました」
「履歴書?」
「兄の保証人は佐々木幹夫と言う方で、知らせてくれると言っていました」
署では聞けなかった重要な証言である。洋子が徳田を疑い始めたことで次々と新証言が出てくる。
「南米沢駅前にホテルはあるかね?」
徳田は町並みを見て駅に近付いているのを感じて運転手に訊ねた。
「はい、ビジネスホテルがございます」
「そう、そこまで乗せて欲しい」
徳田の芝居である。この運転手もいずれ聴取される。ホテル滞在と伝えておけば時間稼ぎになる。
「ありがとう」
車寄せで降りてホテルに入る。タクシーが走り出すとすぐ駅に急いだ。新潟経由でゆっくり帰ることにした。一日を無駄にするが仕方ない。
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