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〔私の部下はその事実を把握している。直接声を掛けて止めたこともあるそうだ。兵隊はみんな敗戦で疲弊している。生き残って帰還しただけでもラッキーである。だから上官も甘やかしてしまった感はある。またブローカーは兵士と日本人の間にできた子だ。所謂オンリーの子供だ。基地にも出入りが自由だったこともある。今は厳しく武器の持ち出しを管理しているから横流しも減った。それでもグループで動けば簡単に売り捌くことはできるだろう。最後は双方のモラルが解決してくれる〕
将校の話をすべてメモした。そして将校は一枚のメモ書きを横田に渡した。
〔私の部下の名前と部署だ。事務屋だから大概いる。直接行って聞いたらどうだ?何なら横田から軍用機に乗せてやる。手榴弾を使用する殺人事件ならそれぐらいは当然だろう。我々の威信にも関わる大事件だ〕
将校は厳しく締め括った。確かに手榴弾殺人事件が連続で発生したならアメリカ軍も追及される。恐いのは市民運動である。
〔ありがとうございます。有益なお話を聞かせていただきました。早速米沢に知らせます〕
将校が怪訝な顔をした。
〔君がやるんじゃないのか?〕
〔はい、米沢の担当が調べています〕
将校が笑った。
〔随分とのんびりしている。今沖縄に飛べばそれだけ早く解決出来ると思うが〕
将校は手を上げて管理人室を出て行った。確かに将校の言う通りである。これから署に戻り上司に伝えてそれから米沢に電話する。その間に犯罪が起きるかもしれない。起きなくてもホシに逃げる時間を与えているようなものである。海外に逃亡すればもう手も足も出ない。
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