都橋探偵事情『舎利』

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 伊勢佐木中央署に電話が入っていた。米沢東西署の佐藤刑事からである。 「訛るんでねぞ、横浜さ笑われるぞ」  高橋刑事に冷やかされている。 「お世話になってる。米沢東西署のさどうと申すます。実は手榴弾殺人事件の被害者斎藤嗣治さ以前勤め先の保証人がいます。佐々木幹夫ど言う男だ。その男の住所がだね」 「ちょっと待ってください」  相馬課長はメモを用意した。 「佐々木幹夫ですね、齢は?」 「まだ細げえごどは分がらね。それで住所んだげんと、横浜市中区山手5-8 フラワーマンション403だ、それで」 「ちょっとお待ちください、担当と代わります。おい中西、正義の味方」  課長が中西に受話器を回した。 「俺?、聞き込みなら横田にやらせりゃいいじゃん」 「ほらいいから出ろ」  課長が電話ごと中西の机に置いた。 「もしもし代わりました、相州は横浜の生まれにござんす、横浜と言っても広うござんす、伊勢佐木、その伊勢佐木の悪党を退治する伊勢佐木中央署の正義の味方、中西和美とは私のことでござんす」  佐藤が受話器を押さえた。 「おがすな奴出でぎだ。どうするっす?」 「どうするって我慢すて話しぇ。とぼげだごど言ったらおらと代われ、横浜辺りに舐められでいられるが」  高橋が受話器を取った。 「もすもす」  中西が受話器を押さえて笑った。 「も、もすもすだって」  笑いが収まらない。布川もつられて笑い出す。
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