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「もすもす、もすもーす」
受話器から漏れる高橋の呼び声が更に笑いを深くした。結局課長が用件を聞き出した。
「と言うことだ、中西、横田が戻ったらすぐに行け」
命令された。
「分かりました。今行って来ます。横田も休ませてやってください」
中西は山手の佐々木宅に向かった。マンションには管理が常駐している。警察手帳を翳して403号室を呼び出してもらった。
「はいどちら様ですか」
若い女の声である。
「私は伊勢佐木中央署の中西と申します。もしかしたら娘さんかな、幹夫さんはご在宅ですか?」
二秒ほど沈黙した。
「出掛けました」
「お仕事ですか?仕事先は分かりますか?」
今度は三秒空いた。
「多分」
おかしな答えに中西は首を捻った。
「そちらに伺っていいでしょうか?」
インターフォンでは話にならない。それに居留守かもしれない。インターフォンが切られた。中西は4階までエレベーターを利用した。403号室をノックする。
「開けなさい、開けないと令状を持ってくるよ。管理人から鍵を借りて勝手に入ることに・・」
話している途中で施錠が解かれた。中西は玄関に入ると泣き腫らしたのか瞼の腫れた若い女が立っていた。
「どうしたの?」
女は首を振った。
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