都橋探偵事情『舎利』

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「あれだ」  トタン張りの店に灯が見える。チャーミーの看板が薄汚れてる。車を停めた。 「いいか、気を付けろ」  頷いて名城が降りた。心臓が高鳴る。木製のドアを開けるとチリリリリーンと音がして猫が出迎えた。 「タロウ」  金髪にパーマをかけた年増の女が犬を呼んだ。名城が会釈した。 「いらっしゃい」  他に女はいない。 「あのう、すいませんけど山城さんはお出ででしょうか?」  女は怪訝な顔した。奥から男が出て来た。もう50は過ぎている。 「たー?」  酒で掠れた声で名城を見た。 「名城の伯父さんに紹介されました」 「名城ぬうふーちゃーちゃーさんてぃ源蔵さんぬくとぅが?」  沖縄には名城性も多い、どこの名城か問い質した。 「そうです、嘉手納の名城源蔵の甥で名城豊と申します」 「あんこーい、うやじぬうぃーっくゎが?横浜んかいんじてぃんじゃるうぃーっくゎってぃぃやーさんぬくとぅが?」 「はいそうです。伯父さんに山城さんを紹介されました」 「えー、ビールしこーれー」  山城は女にビールを支度するよう言った。ボックス席に座るよう指示された。 「あんしわんにんかいちゃーる用事がやー?なーんかしぬぐとぅちらんちかん」  やくざも一線は退いているようである。要望に応えらられないかもしれないと言った。
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