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「他にない?オーナーに繋いでみましょう。これは預かっておきます」
10分ほど待たされた。ホストの後ろに黒人がいる。ホストの前に出た。
「デニス加藤だけどどんな用件?」
流暢と言うより完璧な日本語である。小川はちらとハーフのホストを見た。
「こいつは気にしないでいいよ。ハートが繋がってる」
デニスが笑った。
「手榴弾が欲しい。それも急ぎで今夜中に」
デニスとホストが見合って笑みを浮かべた。
「何かお間違えじゃありませんかとお約束のおとぼけは止めて置こう。それなりに情報を掴んで来ているんだろうから。何に使うかによる。それに高い」
「金は今ない。でもいずれ支払う。戦中テニアン島で殺された親兄弟の敵を討ちたい」
「どうしてそれが手榴弾?」
デニスは戦後生まれであり生まれたのは東京である。母親は兵隊と結ばれてデニスを生んだ。兵隊の勤務地が沖縄になり同行した。
「手榴弾で自決をさせた。俺達の目の前で。その将校を同じやり方で殺したい」
「まさかあんた山形県の殺人事件の人?」
デニスはその記事を読んで知っていた。小川は頷いた。
「あの男はその将校の手先となって洞穴の中にいる女や幼子を殺すことを手伝っていた」
「この拳銃は俺が売らなければ奪うつもりだったの?」
小川が預けた拳銃をデニスが構えた。
「そのつもりでいた」
小川は本気である。その覚悟も出来ている。
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