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「やる気だねあんた、気に入った。俺は黒人の兵隊の子だよ。見れば分かるか。おやじは二歳の時にアメリカに逃げた。おふくろが一人で俺を育てた。その恩返しのために俺は生きてる。黒んぼと虐められたけどおふくろが助けてくれたよ。黒んぼには黒んぼの生業があった、今じゃクラブのオーナーだって」
「おふくろさんは?」
「元気だ、カラオケに嵌っている」
「羨ましい。俺の母親は弟を抱いて手榴弾で自決した。俺の目の前だった。まだ歩けない妹は俺が絞め殺した。無駄死にだ」
「何とも慰めようがないな」
デニスの言葉にホストが頷いた。
「よし、俺の車で行こう。10分程度のところだ。マサル、お願い」
マサルと呼ばれたホストはジープを持って来た。小川が後部座席に乗った。
「金はどうしたらいい?」
「あんたが成功したと言うニュースが流れりゃ只で言いよ」
「失敗したら」
「どうせ生きていないだろう、生きていなきゃ取りようがない」
建設現場の資材倉庫に入る。
「ここで待ってて」
デニスが一人で車から降りた。5分ほどして戻って来た。
「沖縄のヤクザにはひとつ100万で売るよ。本土のやくざには300万。武闘のやくざは金なんて持っていないから買えないよ。商売上手なやくざはこんなもん必要ないからね」
デニスは二つの手榴弾でジャグリングした。
「船か飛行機か?」
「明日那覇から飛行機で帰る」
「缶詰だな」
そう言って郊外のスレート張りの小さな缶詰工場に着いた。やはりここで待ってろといい一人で工場に入った。しばらくすると工場の灯が点いて機械が動く音が聞こえた。
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