都橋探偵事情『舎利』

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「パイナップル二つ」  デニス加藤が工場長に三万円を渡した。手榴弾をビニール袋で包みジュースを入れて蓋をする。 「パイン缶だけど中身はレモン」  ジョークはマサルに受けて大笑いする。パイン缶を小川に渡した。車内にあったレジ袋に入れた。松山向けて走り出した。 「これは返して置こう。成功を祈るぜ」  デニスが拳銃を返した。弾は抜かれていない。 「ありがとう。おふくろさんに宜しく」  デニスの後頭部、そしてマサルの後頭部を撃ち抜いた。車は歩道を乗り上げサトウキビ畑に突っ込んだ。小川はレジ袋を手にして車から降りた。拳銃をデニスの股間に投げた。運転席側に回り車のライトを消した。  米沢では大きな情報を掴んだ。 「音消すのためさスクラップの上さ敷いだ布団の販売元判明すた」  米沢東西署の佐藤刑事が飛び込んで来た。 「買ったのは誰だ?」  高橋刑事が佐藤刑事の胸倉を掴んで訊いた。 「現金で購入だがら氏名は確認出来ね。白の軽トラックさ積んで行ったそうだ。苦すい」  高橋が手を離した。 「続げろ」 「はい、二が月前だ。三十代半ばの男布団一式ど毛布買ったそうだ。布団屋の主人運ぶべがど訊いだら車だがらたがぎ帰るど断ったそうだ」 「軽は?」 「レンタカーだ。布団運ぶ際さ主人がわナンバー覚えでいますた」 「手配すたのが?レンタカーだら免許証確認すてんべ」 「それはもう、既さ割り出すた。借主の氏名は名城豊、37歳 神奈川県横浜市鶴見在住んだげんと」 「んだげんとどうすた?」 「二日前さ紛失届出でる。二が月前ど三日前さレンタカー借りでる」  名城は小川の指示通りに動いている。
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