都橋探偵事情『舎利』

89/191
前へ
/191ページ
次へ
「はい、担当将校は僕が事件の担当と勘違いしていました。横田から軍用機で乗せて行ってやると言われました」 「行ってくりゃ良かったじゃねえか。お前折角沖縄に行けるチャンスを無駄にしちゃって。俺ならその足で行っちゃったな」  中西がからかう。 「中西はブローカーの氏名を聞いたらしいじゃないか?」  相馬課長が口を挟んだ。 「ええ、ブローカーは『クワトウ』と呼ばれていたと聞きました。情報源は間違いありません。。ただ氏名は又聞きですから確実かどうか分かりません。いずれにしても近い発音かと思います」 「それで佐々木幹夫の捜索はどうなった?お前米沢東西署に連絡するって根岸屋出て行ったろ」  布川が勘定を済ませている。 「さすが布川班長、記憶力抜群ですね」 「昨夜の話だよ」  中西は笑って誤魔化した。 「先方にはさっき電話しました。担当の高橋刑事です」 「もう一度説明してくれ」  課長が催促した。 「佐々木幹夫は米沢の事件を知り、まだオープンしたばかりの産業貿易センタービルの店を閉めて出て行きました。一人娘がいますが、やはり急な行動にショックを隠せませんでした」 「間違いないのか?米沢の事件との関係は?」 「間違いありません。佐々木は被害者斎藤の保証人になっていました。同じテニアン島からの帰還者です。二人は特殊な関係で結ばれていたと考えられます」 「佐々木がホシと言うことはないか?」  課長が突っ込んだ。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加