都橋探偵事情『舎利』

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「横田、鶴見で米沢の二人を待ち受けろ。そして道案内をしてやれ。山形の百姓じゃ横浜の右の左も分かるまい」  岩手出身の課長が指示した。  桜木町、関内、石川町、日ノ出町、黄金町、戸部。徳田の行動管轄じゃ見たことのない個人タクシーだった。グレーのセドリック。関内駅で馴染みのタクシーを拾った。 「旦那どちらまで」 「忙しそうだね、私の質問が解けるまで走ってくれるかな」 「へいよ」  運転手はメーターを倒した。 「横浜ナンバーの型の古いグレーのセドリック、個人タクシーでナンバーは5-2625」 「行きましょう」  運転手はすぐに鶴見に向かった。 「さすがだね」 「まだ若い運転手ですよ髭の濃い」  鶴見駅前ロータリーに来た。 「旦那大当たり」  客待ちタクシーの中に並んでいた。 「これ少ないが」  運賃の他に2千円を渡した。 「毎度あり」  徳田はタクシーの列に並んだ。7台目である。一台また一台と客を乗せて出て行く。一台早い。後ろの客に譲る。グレーのセドリックが停まる。徳田が乗り込む。 「産業貿易センタービル」 「えっ」
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