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「バレてましたか」
徳田が笑った。
「なぜ私の車に?」
「あなたが佐々木貿易で閉店の案内に釘付けになっていたのをたまたま見掛けました。それであなたの跡を追い掛けました。佐々木貿易と商談でも?それとも佐々木幹夫さんに用事でしょうか?」
「あなたは一体誰なんです?」
徳田は名刺を出した。
「人捜しを得意としています。もしご用命なら連絡を」
「私に取り付いてどんなご用件でしょう?」
徳田は揺さぶりが成功と読んだ。金城は気になってしまい徳田の問いに答えてしまったのである。
「私はある男を捜しています。その過程で佐々木幹夫さんが登場しました。金城さんは佐々木幹夫さんのことを何かご存知ですか?佐々木さんは逃げるように家を飛び出した。親族もご存知ないようです」
「親族って?」
「娘さんですよ、貿易会社を手伝っていた」
名城が佐々木貿易に様子見に行ったときに遭遇した娘である。その娘のことを名城が随分と気にしていたのを金城は覚えている。
「私は佐々木さんのことは知りません。あの店に頼まれた物を買いに行っただけです」
「そうでしたか、ちなみに酒ですか?」
「菓子です」
「あの店に菓子は置いてありませんよ」
徳田のはったりである。徳田自身が佐々木貿易で販売している商品を知らない。金城は言葉に詰まった。産業貿易センタービルに到着した。料金を支払う。
「金城さん、小川さんて人を知りませんか?小川誠二、ご両親は東北の出身です。私達と同年代です。テニアン島で終戦を迎えている」
徳田はドアから片足を出した格好で話している。
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