都橋探偵事情『舎利』

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「さあ、分かりません」 「そうですか、何か分かったら私にご一報ください。人の生死に関わる問題です」  徳田は車から降りた。 「すいません、誰が捜しているんですか?」  金城は依頼した人物が知りたい。 「残念ですが依頼人の情報は秘密です。ただ小川さんの情報をお持ちいただければ規則違反ですがお教えいたしますよ」  徳田がドアを閉めた。徳田は歩き出して産業貿易センタービルに入る。ドアの陰から振り返る。金城のタクシーはまだ動いていない。徳田の出現で頭の中を整理しているのである。今夜小川と名城が戻って来る。早く知らせたいと気が逸る。  羽田に到着したのは21:00を回っていた。飛行機の遅延で二時間待たされた。 「いいか、名城、別行動だ。どこかに宿を取る、決まったら電話する」  小川は名城から離れて歩いた。小川はモノレールで浜松町へ、名城はタクシーで川崎大師の駅に向かった。小川がブローカー二人を殺害したのを名城は知らない。小川は名城に知らせない方が安全と考えたからである。しかし伯父を撃ち殺した小川はもはや敵討ちだけではなく無差別の殺人者になってしまった。名城の頭にはそれがこびりついて離れない。いずれ伯父の死体も見つかる。当然養子縁組をしてる名城に連絡が来る。いかに切り抜けるか考えていた。 「俺だ、今帰った。小川から電話があったか?」  名城は自宅に戻り金城に電話をした。 「そうか、小川からは何も連絡がない。それより大変なことになった」 「何だ大変て?」  名城は伯父のこともあり胸が高まる。
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