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天上には特別な収容所がある。地上で文化財を破壊した者が死後に入る収容所である。直接破壊した者は当然であるが、命令した者も入れられる。
毎日、天上の文化財の手入れをして、文化財を大切にする気持ちを教え込まれる。
ある程度手入れが出来るようになると、自分が破壊した文化財の跡地に戻される。死者からは地上の人が見えるのだが、地上の人からは死者は見えない。
意思の疎通をはかろうにも、話す能力も書く能力も罰として奪われている。
来る日も来る日も文化財の復旧に専念する。復旧したら永遠に手入れすることになる。既に死んでいるのだから、生まれ変わることもなければ、もう一度死ぬこともない。
地上の人たちの生きる姿が見えるばかり。生き生きした声が聞こえるばかり。
地上の人たちが死者の名を呼ぶことはない。名を忘れたというよりは、呼ぶのもおぞましいかのようである。
忘れるはずがない
決して ゆるさない
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