ファイルNO.0.5:雛月 晃也

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一瞬、首元が緩まったと思ったら、目の前の人が飛んでいった。 「勝手にオレのもん泣かせてんじゃねぇ」 この声は…詠太郎…!!! 詠太郎が、助けにきてくれた…。そう思うとまた、涙が溢れてきた。 「えい、ゴホッ、ゴホッ」 首元触られてたから、上手く声出ない…。しかも足に力も入らずヨタヨタとその場に膝から崩れ落ちた。 不意打ちを食らったらしくリーダー格は、詠太郎に顔が腫れるくらい、一方的に殴られていた。それを見た取り巻きは一目散に逃げていった。 「えい、たろ…」 フラフラしながら詠太郎に近づく。 「詠たろ、僕、大丈夫だった…から」 まだ殴っている詠太郎に後ろから抱きつく。抱きついた時一瞬固まったから僕が後ろにいる事に気づいたんだろう。 「何が大丈夫だよ。大泣きしてたくせに」 詠太郎は、殴っていた手をとめ、胸ぐらを掴んでいた手も離しソイツを床に捨てた。 「ここじゃアレだから、着いてこい」 俺は頷きふらふら着いて行ったら、歩くのが遅かったのか腕を引っ張られ、手を繋がれながら屋上まで連れてかれた。 ××× 「で、なんでアイツらにお前が絡まれてるんだ」 屋上の扉から1番遠い角で、フェンスにもたれかかりながら問われた。 「さっきのは…曲がり角でぶつかったから、だと思う」 「さっきのはって、何回もあんのかよ」 僕は黙って頷く。 「で、でも、殴られたのは、1回だけで後はからかわれたり、副会長に助けて貰ったり、したから…。だ、大丈夫…」 慌ててフォローの言葉を付け加えたつもりが、ますます顔がしかめ面になって言った。言葉選び間違えたか…? 「オレは…」 「オレは、お前が不良が嫌いな事知っていたから、アイツらからも遠さげるために、お前に関わるな…って言ったのに。クソッ」 副会長の言った通り、そうだったんだ。 「そうかな…とは、あとあと、気づいたけど…!!仲良いと思ってたのに詠太郎にいきなり、オレに話しかけるな、関わるな!って言って、しかも話しかけても無視するのは…!酷い…、僕の気持ちも考えてよ…!」 どんだけ辛いと思ってるの…。 感情が昂ってまた、涙が溢れそうになってきた。 「悪かった…。お前のためだと思ったんだ。お前に怪我とかして欲しくなくて」 「勝手に決めつけるな!!現に、距離置いても、僕の被害は変わってないじゃないか!アイツらは初めて詠太郎といた時から…いいオモチャだと…思ってたはずだ」 つい勢いで、詠太郎の腹辺りのカッターシャツを両手でくしゃりと掴む。その拍子でフェンスがカシャンと反響する。 「だから…、もう、無視するの…辞めてよ…。詠太郎と話せないの辛いんだ。自分だけの問題にしないで、ちゃんと関わらせて、ほしい。もう僕だって、巻き込まれてるんだから!」 詠太郎のシャツを掴む手に力が入る。涙が頬をつたうのを感じながら詠太郎の顔を見上げたら、詠太郎も泣きそうな顔をしていた。 「悪かった…。ゴメン。晃也の事も無視もしない。だから、泣かないでくれ」 そう言って、詠太郎に抱きしめられた。まさか、抱きしめられるとは思ってなくて、手をどうすればいいか分からず、10秒くらい手が空中で固まってしまった。 でも、せっかく抱きしめることができるならと思ってる腕を背中に回して僕も腕に力を込めて抱き締め返した。 背中も大きい、筋肉がついててガタイもいい。やっぱり好きだ。僕のヒーロー。最初は消しゴムを拾ってくれた、それだけだった。そこからいっぱい助けられた。いつも僕を助けてくれる。いつの間にか目で追ってた。ヤンキーや不良は嫌いだけど、この人は他の不良達とは違うって思った。 「詠太郎こと、好きなんだ」 顔が見えないことをいい事に告白をしてしまったが、返事がどうでもこれが最後でも、詠太郎と話せたし、抱きしめられたので僕は満足…。満足してる。 と思ってるとガバッと引き剥がされ、両肩を掴まれた。 「い、今なんて?」 「え、詠太郎が好きだって…」 詠太郎は大きなため息をついて、顔を伏せた。 え?何この状況。そして、なんかブツブツ言ってる。 「詠太郎…?」 「人の気もしらねぇーで、クソッ。もう、お前の事離してやれねぇから!」 「そ、それって…」 「お前の事好きだ。大事にしてぇ。お前と話さなくなってお前からずっと元気貰ってたんだって気づいた、これからも隣にいて欲しい」 両思いってこと…? 「僕が一方的に好きだと思ってたから…。信じれないや…嬉しい…」 「晃也」 名前を呼ばれて上を向くと、頬を片手で撫でながら、反対側の耳ともで「すき。絶対離してやらねぇ」と言われた。詠太郎の囁きボイスはダメです、ドキドキしちゃう。 でも幸せを感じて、頬にある詠太郎の手を自分の手で重ねながら 「離さなくていいよ、僕も詠太郎を手放す気ないもん」 と言い終わると同時に、詠太郎に唇を塞がれた。 ファイルNO.0.5雛月晃也 都月詠太郎×雛月晃也 ~完~
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