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side 碧月
ふむふむ、菜央の事情は把握した。一生伝える気のなかった想いをつい、ポロッと出してしまったという、わけだ。なんだよ!可愛いなぁっ!青春してるな!お兄さん嬉しいぞ。
「な、なん……すか」
「いや、碧月さんは菜央がちゃんと青春してる様で安心してる、嬉しいよ」
また、顔を埋めて…、本当に恥ずかしがり屋なんだから。
「なんで…そんな、反応に…なるんですか」
「菜央、昔から自分の居場所作り下手だもん。菜央に好きな人ができて、学校を楽しいものだと思ってくれるようになったと思うと嬉しいんだよ」
昔と言っても、中等部の2年からしか知らないけど。あの時は自分以外は敵だ、この世界なんてクソ喰らえ…みたいな感じだったしな…。
うんうん。僕の可愛い可愛い後輩はよく成長したよ。わしゃわしゃと頭を撫でる。
「ヤ、ヤダ、碧月さん…!やめてくださっ」
「後輩は可愛がられてなんぼよ」
菜央がいじけて黙ってしまった。これ以上は本気で嫌がられるかも…。
真面目に答えるか。
「菜央はさ、言葉に出して自分の感情伝えるの滅多にしないでしょ。だから、今回のつい言葉が溢れて好きって、言ってしまったのも僕は悪い事だと思ってないよ。寧ろ、そんだけ心の中ではずっと好きって叫んでたいんじゃないの?と思うわけですよ」
「自分の…感情を、伝えるの、苦手なん…です。怖い」
「知ってるよ。相手の反応が怖いよね。僕も一緒。些細な事でもね、自分の気持ち伝えるのは、みんな相手の反応怖いんだよ」
多分ね。と言いながら、菜央の背中をさする。さすってない方の手で菜央の顎をつかんで、こちらに向かせた。目が合うように
「人に好きって伝えるのは1番怖いと思う。でも、それをさ、事故でも伝えれたの凄いじゃん!僕にはまだ、出来ないよ」
ほんとできる気がしない。慎琴に好きって伝えるの怖いな。しかも慎琴って長男だし、跡取り息子だしな。
「それとね、相手の返答を聞かないうちに、勝手に自分で答えを決めつけるのはダメだ」
菜央が口をモゴモゴさせている。コレは何か喋りたいけど、言葉が見つからないやつだな。
「ねぇ、菜央。今日生徒会の業務サボっちゃう?」
「エッ…」
「僕と逃避行しよう」
僕は菜央の答えを聞く前に手を引っ張り、学校の校門に向かって走り出した。
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