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side 菜央
――2年前――
「あの…、助けて…くれて、ありがと…ございますっ」
正直、フジと言われた人は…ここまで連れてきてくれたが殆ど黒髪の人しか喋っておらず、この人は喋ってなかった。けど、助けて貰ったのでお礼を…と思って意を決して口に出したのだ。
「おぅ。間に合って、良かった」
「あの、お名前…教えて貰っても…いいで…すか。お、俺はナオって、いいます…」
「フジ、さっきのヤツにも他のヤツにもそう、呼ばれてる」
フジさん…。さっきキラキラして助けてくれたフジさん。
隣をみて見上げるとフジさんが椅子に座りながら俺の方を見ていた。見ていたが、サラサラの髪の毛で長めの前髪で全然顔が見えないので表情が分からず怖い。
「ナオ」
な、名前呼ばれた……
「な、なんで…すか」
「今日泊まるとこあるのか」
なな、なな、な、?!?
「帰りたくないんだろ…。俺ん家くるか」
フジさん…の家…ゴクリ。き、気になる。
「い、いき、たいでス…」
×××
バイクの後ろに乗せてもらい、フジさんの家にあがらせてもらった。セキュリティの高いマンションの一室だった。フジさん、只者じゃないと思ってたけどこの人絶対金持ちだ。歳そんな変わらなそうなのに…。
シャワー浴びろと風呂場に押し込まれ、出でくると手当てするから、とベットに座らされた。
殴られた所に薬塗ったり、傷口にはガーゼやバンドエイドを優しい手つきで丁寧に貼ってくれた。
「もう、コレに懲りたら、街にきてフラフラすんな」
さっきの人もだけど、こんなに丁寧に手当てしてくれた人達はじめてだ。
なんだが、大人数に襲われて…助かって、人肌に触れて泣けてきた。
「っ……。帰りたく…ないデス、俺に居場所…なんてっ」
うるうるぼやけた視界で、捉えたフジさんは俺を見上げていた。今は前髪が横に流れてて目が見える。キレイな顔…。
と思ったら、視界いっぱいにフジさんの顔が映り、キスをされた。チュ…とリップ音がしたと思ったら唇はすぐ離れて。
「泣くな」
と囁かれ、耳を塞がれながらまた唇を塞がれた。
ぼーっとした頭で何回かキスをされていたら、途端にフジさんが「シャワー浴びてくる」といい残し、頭を撫でて去っていった。
ポカンと見送っていたが、ハッと正気に戻って、助けれくれて泊まらせて貰ってる恩人とき、き、キスをしてしまった……!と恥ずかしくなって、人のベットだということを忘れ、布団にくるまってそのまま寝てしまった。
朝目が冷めると、身動きが取れず何事
かと思ったら布団にくるまっていた上からフジさんに抱きしめられていた。
これは抱き枕と同じ用途だと思うけど、人と一緒の布団で寝ているなんて初めてだったので、それにもなんか涙がでてきた。
気がつくと、人の気配もせず身動きが取れていた。
あ、俺あのまま2度寝したんだ…。ベットから降りてカーテンを開けると、太陽が真上にあり、嘘だろと思って時計をみると13時過ぎていた。
「うそ…学校…学校行かなきゃ……」
慌ててカバンを探して、昨日の服どこだと部屋をでたら、廊下でフジさんと鉢合わせた。
「どこ行く気だ」
「が、学校…いかなきゃ」
フジさんがじっと見つめてきて、思わず後ずさる。
「今更行くのか?」
で、でも……
「しかもその大怪我で?今日くらい休め」
父に…ズル休みしたら…怒られる。
「今日は休め、そして飯買ってきたから食え」
と言い、ビニール袋を押し付けられた。
ローテブルでフジさんと向かい合わせになって、一緒に朝か昼かわからない微妙な時間にご飯を食べる。
「ナオ」
「はい…」
「多分…アイツが、昨日の黒髪のヤツがお前の事何とかしてくれると思う」
「なんで、そんな事…分かるんデスカ…」
「それはアイツが凄いやつだからだ。そして、滅多にアイツは人の事は助けない。アイツのお眼鏡にお前はかなったんだ。これは凄い事だぞ」
そうなんですか…。と呟いてコンビニ弁当の白米を口に含む。黒髪の人は正直フジさんより何考えてるか分からなくて怖い。
「昨日お前は居場所がないと言ったが、アイツは絶対居場所作ってくれるはずだ。だから、もうここには来るんじゃねぇ」
それは…、もうフジさんと会えないって事…?
「嫌…です」
誰かと同じ布団で寝たのも初めてて、嬉しかったのに…。やっと俺にも…俺にも優しくしてくれる人が、心が満たされそうになってたのに…
「そう、やって…俺を…突き放すんだ」
アレ…また涙が、
「だから、泣くな…って」
涙が止まらず、パーカーの袖で目をおさえてると、フジさんが近くにきた気配がした。そして、頭を撫でられながら抱きしめられた。
「わかった…。来るなとは言わんから、週末だけにしろ。俺が迎えに行くから」
袖をどかしフジさんを見上げると、目線があった。瞳を見てたら吸い込まれそう…。
そして、か、顔が近いっ!
更に顔が近づいてきた。
き、昨日みたいにキスされるんじゃ…!
と思って口を噤と、唇ではなく瞼にキスをされた。
口にされると思ったからめっちゃ恥ずかしい…!
「だから、なくな。ナオ」
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