ファイルNO.1:斗坂 菜央

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side菜央 碧月さんに先週、自分の話をした後、フジさんの存在が懐かしくて、フジさんに会いたいなと思った。 だから、ようやく週末に時間がとれたから街に降りてきたのだ。 昔、よく出入りしていたたまり場に向かう。煌びやかなネオン街をぬけ、裏路地に入り2本めでまがる。路地から出ると目の前には寂れたゲームセンターが現れた。 まだ、潰れてなかった。ここがまだたまり場になってるか分からないけど、入ってみよう…。 しっかし、記憶の中にあるゲーセンの外見と変わらない。元々寂れていたら2年くらいじゃ外見が変わらないってことか…? ちょっと中を覗いて、いなかったら帰ろう。フジさんに会いたいとは思いつつも、もう数年も会ってないのに…いきなり連絡するのも勇気がなくて、出来なかった。誰もいなければ…諦める。そうしよう。 そのまま足を進め、ゲーセンの入口のドアを開いて中にはいる。 すると外見より小綺麗な空間がそこにあった。前より綺麗になってる気がする。 だけど、そこら中に不良共がたむろしているのでガラの悪さは変わらないな。 ぐるりと周囲を見渡したが、フジさんらしき人もいなさそうだ。やっぱり帰ろうかと思い、踵を返したが 「おい、よそもんが勝手にはいってきてんじゃねーよ」 肩を捕まれ、強制的に振り向かされた。すると、そいつは驚いた顔をした。 「な、なんで、お前がいるんだよ…!」 ナオ…と僕の名前を呟いたあとに、そのまま胸ぐらを掴まれた。 「何しに来たナオ!この前は関わらないって拒絶してきたくせにっ」 この前碧月さんと一緒にいた店で絡んできたサングラス男の後ろにいた、スズキだ。何かと俺の方がフジさんに…!とフジさんを尊敬していて、俺が気に食わないのかよく突っかかってきたから覚えている。 「お前には、関係ないだろ…スズキ。僕はフジさんに…」 「お、お前がフジさんの名前を呼ぶなっ!急に来なくなって癖に!その間に役にたってたのは、俺だぞ!お前じゃないんだっ」 昔から思ってたけど、コイツめんどくさい…。今だってすぐ手を出してくるし。 右フックが飛んできたのを、後ろに上体を倒しながら避ける。スズキは当たると思ってたのと、僕の胸ぐらを掴んでいたせいで バランスを崩し、前に倒れこもうとしていた。そこを腹部めがけて思いっきり蹴りをいれた。スズキは綺麗に宙をとんで後ろに吹っ飛んだ。 ドサッと地面に落ちた音と共にスズキのうめき声が聞こえる。 「昔からお前って何も変わらないな。すぐ手が出るし、フジさん、フジさんって今までもうるさく追っかけてるんだろ」 「うるさいっ!お前だってそうだろ!」 ひ、否定はできない。フジさんのことは好きだし。 「俺は、お前が来る前からフジさんのこと慕ってて、役に立ちたくて!なのにっ!お前はポっと出のくせに、フジさんと仲いいし、喧嘩もそんなヘナチョコな見た目してるのになんか強いし!」 ひどい言われようだけど、見た目に関してはスズキとそんなに変わらないと持ってるんだけど。 スズキは立ち上がってまた叫びながら突進してきた。 「俺は、お前が気に食わないっ。ずるいんだよ。お前なんかだいっ嫌いだァ」 「僕も、お前のようなすぐ暴力ふるう、暴力でしか解決出来ないクズ嫌いだ。まずはそこ直さないと、これからもフジさんには、近づけないと思うぞ」 「お前の言葉なんか、誰が信じるかっ」 あと数センチで拳があたる、どっちに避けようかと思っていたら。拳が鼻先でとまり、僕でもスズキでもない声がした。 「2人ともそこまでだ」 状況を理解できず、目の前のスズキと目を合わせてキョトンとしてしまった。 周りを見ると、ここのアジト連中が僕達を囲っていて、目の前を見るとスズキの首根っこ掴んでいるフジさんがいた。 「ふ、フジさん…」 「ナオ、久しいな。あまり、スズキをいじめるな。これでも俺の役に立とうと頑張ってるんだ。ナオが言った通り自分の欠点を理解できたら、もっといいと思うがな」 フジさんが出てきたらお開きだ。 2年ぶりに見るフジさんは更に大人っぽくなってた…かっこいい。視線を下にさげ、スズキを盗み見するとフジさんと近くにいて触られているのが嬉しいのか恋する乙女のような顔になっていた。僕は怒られてるのにとてつもなく悔しい。 「すみません。騒ぎをおこすつもりでは…」 「ナオ。俺に何か用があるんだろ?」 特に用があってきた訳じゃないけど、フジさんと話がしたいから僕は頷いた。すると、フジさんは近づいてきて、耳元で「一緒に帰るか。行くぞ」といった。 「ふ、フジさん!もうかえるんスか!?今来たばっかりなのに…」 スズキがまた喚いているのが聞こえた。 「実は奥の部屋で寝てたからお前らが来る前から居た。ナオを送ってくからまたな。あまり騒ぐなよ」 そう言って、先にどんどん進んでいくフジさんに続いて僕もアジトを出た。 そして、2年ぶりにフジさんのバイクに乗ってフジさんの家に帰ってきたのだ。
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