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管理人室の扉の向こうから、「はーい。どうぞ~」と聞こえた。
「失礼します」
ドアを開け、1歩進む。
「九条くん。やっと帰ってきたね。待ってたよ。君が帰って来ないと、俺帰れないもん~!」
それは、すみませんねぇ。
いい歳してもん~はないだろと思ってしまったよ。
この人はこの寮の管理人の羽瀬川 絢斗25歳だとか。因みにこの人もゲーム好き。
黒髪だけど、ピアスはやたらと空いてる。髪の毛でかくしてるつもりだけど。喫煙はしてないみたい。そこだけは高評価。丸メガネかけてるから、なんかうんさくさいんだよね。
「これだろ?また、ゲーム買ったの?」
机の上から四角い茶色のものを渡される。
待ちに待った……ゲームソフトだァ!!
「はいはい、新しいソフト手に入って嬉しい気持ちは分かるけど、いい子な九条チャンは開けるのは部屋に戻ってからね」
こいつに九条チャン呼びされると寒気が。
「分かってますっ。こんな時間まで、待っててくださりありがとうございました」
「うんうん。お礼が言える子はいい子だね~」
ニヤニヤと笑いながら羽瀬川は言う。
「では、おやすみなさい」
「いい夢見ろよ~」
羽瀬川が言い終わる前にバタンと扉を閉めた。
ゲームソフトゲットしたし、部屋に帰って早く開封しよ~っと!
上機嫌でエレベーターまで行くと、エレベータードラの横に慎琴が立っていた。
「慎琴?先に部屋に帰ったんじゃ…」
「管理人との用事なんてすぐ終わると思ったから、待ってたんだ。隣の部屋だし殆ど行き先が同じだろ?」
「そうだね?」
会話が切れたタイミングで、運良くエレベーターが1階に降りてきた。
慎琴の方を見上げたら、先にどうぞにという仕草をされた。
あぁー!!こういうとこだよ。ずるい!もう、僕だけじゃないって知ってるけど。
僕が入り、追って慎琴も入ってきて、エレベーターのドアがしまる。僕達の部屋の階層は、7階だ。ちょっとだけ時間かかるなー。
「碧月の会いたい、一目惚れした人って、管理人?それとも…、」
「か、管理人?!?なわけないじゃん、あんなやつ!」
なんでそこで管理人が出てくるんだ?
なんか今日の慎琴、いつもより変な気が……?
「そうか、ちょっと安心」
「えぇ。僕のタイプあんなのだと思ってるの?心外だ~」
ジトーと慎琴をみる。すると、慎琴も僕の方を向いてたので目が合ってしまった。目が合うと思ってなくて、ぱちぱちと瞬きするも、慎琴も逸らす気がないらしく、どうしよう。
「碧月……」
ポーン
〔7階でございます〕
7階につき、ドアが開く。
その瞬間にダッって外に出る。
さっき慎琴がこっちに手を伸ばしかけて、焦った。何かされるんじゃないかと…。変に期待をしてしまった。恥ずかしい。僕のバカバカバカ。
「碧月」
「な、なにっ?!」
「部屋と逆方向だよ」
はっ!!エレベーターの密室から逃げ出すことばかり考えてたから、部屋とは逆方向に来てしまった。バカだ。
「あはは。間違えちゃった……」
追いついてきた慎琴が隣に立つ。
「しょうがないね。そんな子には手繋いで連れてってあげよう」
「え」
スルッと、カバンを持ってない右手を繋がれた。
え、え?!これって所謂恋人繋ぎってやつでは???全世界の碧月さん困惑。
「そうだ。今日の夕食、一緒にとらないか?」
「うむ」
食事だってて??今の状態で慎琴と一緒にいる時間が長くなるとキャパオーバーしそうだよ!
よし断ろう。ゲームしたいって言えば許してくれるだろう。
「食堂いく?いや、部屋でデリバリー頼んだ方が早いね。そうしよう。」
「うむ」
「うん。今頼むから先に部屋に入ってて」
待って、何故OKしてる??ちょっと!!!勝手に口が「うむ」って言ってるだけだから!食事一緒にOK!って訳じゃないんだよ。僕のバカぁああ!!
ぎゅるるるる。きゅる。
お腹空いたなぁ。でももうちょい寝ていたい。僕の食欲我慢してくれ。
瞼が重くて開けないので愛用の抱き枕を抱え直し二度寝しようと寝返りをうった。
あれ、僕の抱き枕、ない。瞼がまだ開こうとしないので、手で彷徨いながら枕を探す。
おかしいな…。蹴飛ばして下に落としたかな。
まぁいいや、今日は土曜だしこのまま寝よう。
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