二人の白球

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「日菜ちゃんは和葉くんをソクバクしすぎているんじゃない?」  院内学校で友達になったすみれちゃんに11歳の時に言われた。「束縛」なんて難しい言葉を使ってた。 「そんなことないよ。和葉だって楽しんでやってるよ。それに私が帰ってきてってお願いしてるわけじゃないもん。和葉が自分で私のところに来てくれるんだもん」 「だーかーらー、気を使ってるんだってば。双子で自分だけ元気なんて申し訳ないって思ってくれてるんだよ」 すみれちゃんは自分のことのように息巻いていた。 「和葉は深く考えてないよ。物心ついた時からこの生活だもん。何も疑問感じてないよ。」 「それは、そうかもしれないけどさ。」 少し勢いをなくすすみれちゃん。 「あ、もしかしてすみれちゃん妬いてるの?」 「もう!日菜ちゃんってば!」 「おい、チャイムがなったぞ」 ここで定規かと思うくらい真面目な蓮が声を出したのでこれで会話終了。ちなみに蓮のことをすみれちゃんと日菜はかげで学級代表とよんでいる。日菜と和葉の仲の良さは病院でも有名だった。 「とにかく日菜ちゃんは和葉くんが好きすぎるんだよ」 この意見には日菜自身も異論はない。日菜には忘れられない思い出がある。 「あの子鼻の下に変なのついてるよ。」 日菜は小さい頃酸素を取り入れるために鼻から短い管がついていた。これを携帯用の酸素を持ち歩けば外にも行けるのだけど、どうしても目立ってしまう。みんな悪気はなくてもじろじろ見られるし、不思議がらてしまう。ポジティブで社交的な日菜もさすがに出かけるのがつらくなった。そんな時和葉は天使のような笑顔で言ってくれた。 「日菜は世界一かわいいよ。だからみんな見てしまうんだよ。酸素のおかげで日菜と一緒に遊べるなら、その管だってぼくは大好きだよ」 「好きすぎるって言われてもな」  だって好きにならないと空の階段をのぼってしまいそうじゃない。地上にしがみついてないと、死神か天使に連れてかれそうじゃない。日菜の毎日にはいつもどこかに死がひそんでいるのだ。
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