まるはまるでまるだから!

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おかあさん、おみず! まるは、おみずのおさらのまえにすわって、おかあさんのかおをみた。 「それ、さっき変えたばかりだからキレイだよ?」 だめ! まるはおさらをじぃっとみた。 はぁ、とおかあさんがためいきをつく。 「はい、はい。分かりました」 おかあさんがおさらをもって、だいどころにいった。 じゃーっとおとがして、あたらしいおみずをいれてくれている。 「はい、どうぞ」 ちゃぷんとゆれるおみずがはいったおさらが、まるのまえにおかれた。 あたらしいおみずだ! まるがおみずをのむのをみて、おかあさんはふふっとわらった。 「後ろから見ると、まるはタヌキにそっくりだねぇ」 まるは、まるなの! タヌキじゃないもん! ……タヌキって、なぁに? 「それにしても、何でまるは新しいお水しか飲まないのかなぁ……?」 だって、いわれたもん。 あったかくて、ふわふわして、やさしいのが、まるにいったの。 「新しいお水しか飲んじゃダメよ」 どうして? 「おなかをこわしたりしたら、術がとけてしまうからね」 じゅつって、なぁに? 「……お前は、外の世界では生きていけないから」 なんで、あったかくて、ふわふわして、やさしいのは、かなしそうなの? 「一度しか使えない術だから、気をつけてね」 うん、わかった。 まるは、あたらしいおみずしかのまない! 「いい子ね、いい子」 あったかくて、ふわふわして、やさしいのが、まるをなめてくれた。 すごく、すごくうれしかったのに、いつのまにか、あったかくて、ふわふわして、やさしいのは、まるのそばからいなくなった。 「まる、どうしたの?」 まるは、あったかくて、ふわふわして、やさしいのにあいたいの……。 さみしいの……。 「ごめんね、まる」 おかあさんが、まるをだっこしてくれた。 「大丈夫。おかあさんは、まるがタヌキでも大好きだからね」 ちがうもん! まるは、さみしいの! 「まるは、かわいい、かわいい」 おかあさんはにこにこしながら、まるのあたまをなでてくれた。 あったかくて、ふわふわして、やさしいのになめてもらったときとおなじくらい、うれしいきもちになった。 まるは、おかあさんにあたまをぐりぐりとおしつけた。 「タヌキでも、ずっとおうちにいていいからね」 タヌキじゃないもん! まるは、まるで、まるだから!
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