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「お疲れさん」
声がする方を見ると。
「あっ、芹沢部長。お疲れ様です」
「一ノ瀬、一人か?」
「いえ。亜希と一緒だったんですけど、すでに別の場所に出会い見つけに行っちゃって」
「あぁ。そうか。今日の交流会はそれがメインだからなぁ。藤下はこういう時も、素早く自分から動くタイプなんだな~」
「そうなんです」
「なら。少しここいいか?」
「はい。もちろん」
芹沢部長が空いてる席に座る。
「一ノ瀬は一緒に行かなかったのか?」
「はい。あたしは今日は美味しいモノたくさん食べに来たんで」
「なるほど。一ノ瀬はそっちか」
「はい。あたし世の中にある美味しいモノ全部食べたいって思ってる人なんで」
「おぉ~そうか。それはすごいな」
「現実的にありえないですけど(笑) でも、料理って無限じゃないですか。作る人によって材料によってどれだけでも料理が生まれる。それを自分が食べられるのって不可能ですけど、でもその食べる楽しみが永遠に続くって幸せだなって思うんですよね。だから今日の料理も出来れば全制覇したいなと思って!」
「ハハハ。確かに。いや、そんな感じのこと、うちの奥さんもよく言ってるよ」
「そうなんですか!?」
「あぁ。うちの奥さんもね、食べることが大好きな人で。オレは元々そういうタイプではなくてね。その時その時まぁ何か食べられればって感じだったんだけど。でも、奥さんと知り合ってから、とにかく美味しいとこ食べに行きたいって、いろんなとこ連れ回されて。そこからオレも食べることに興味持ち始めたんだ」
「え~。奥様なんかパワフルですごいですね」
「そうなんだよ。オレが食に興味ないのが気に食わなかったみたいでね。”世の中にこんなに美味しいモノが溢れてるのに、あなたはなんてもったいない人生を過ごすの”って(笑)」
「あー!それわかります!あたしも自分の人生であとどれだけ美味しいモノ食べられるんだろうって思ったら、いてもたってもいられないですもん」
「そうそう。そんな感じ。元々はね、うちの奥さんとは同期でね」
「えっ?この会社にいらっしゃったんですか?」
「そうなんだよ。まぁ今は会社辞めて子育てを頑張ってくれてるんだけど」
「そうなんですね~」
「だけど最初は、奥さんとは馬が合わなくてね。常に熱い感じの奥さんが正直鬱陶しかったっていうか」
「えっ?そこまで?」
「あぁ。だけど奥さんがそんなオレを放っておかなくてね。オレが避けても常に奥さんが気にかけてきて、いつの間にかオレのないところを持ってる奥さんに惹かれていったんだよね」
「え~なんか素敵です」
「まぁそれでオレの狭かった世界がさ、仕事でも食べることもどんどん広がってね。付き合ってからは二人でいろんなところに食事しに行ったりしたよ」
「いいな~」
「さすがに今はね、子供もいて大変だから、そんなにしょっちゅうとまではいかないけど。でも、奥さんを楽にしてあげたいから週末は必ず家族で食事に行くようにしてる」
「うわ~素敵すぎます。そんなご家庭ホント憧れです」
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