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「一ノ瀬さん」
「あっ、進藤くん。お疲れ様」
「お疲れ様です」
そんなことを考えていると、会場にいつの間にか来ていた進藤くんが声をかけてきた。
「もうそろそろ料理全部並ぶみたいですよ?」
「あっ、そうなんだ」
「そのメニュー全部何あるか見ました?」
「あっ、まだ。今から見ようかなって。ビュッフェで何あるか全部ここに書いてあるのいいよね~。あ~全部制覇出来るかな~」
「フフ。いいですね。あっ、じゃあまずオレがおススメで教えてもらったやつ何個か持ってきてもいいですか?それは絶対食べたほうがいいって教えてもらったやつあるんで」
「あっ、それ嬉しいかも」
「お腹いっぱいになる前に、まずはそれ食べてみてください」
「うん。そうする」
「じゃあ、ここで待っててください。オレ確認してそれここに持ってくるんで」
「ありがと~」
そう言って進藤くんが、おススメの料理を取りに行ってくれる。
なんて優しいの~。
あ~進藤くんといるとこうやってずっと甘やかされそうだな~。
でも、自分はそんな経験がないだけに少し戸惑うけど、でも案外こういう扱いされて、正直ちょっと心地いい。
ちゃんとあたしを特別に思ってみらえてるみたいで嬉しくなる。
杉崎といる時は絶対出てこない感情だよな~これ。
そもそも杉崎があたしを甘やかすとかないでしょ。
そんなのしても、あいつになんのメリットもないし、あたしも別にそんなん望んでないし。
杉崎とは対等でいれることで、多分あたしのこの気持も保ててるのかもしれないなー。
お互いを認め合って対等な関係でいられるからこそ、この気持ちも多分もうこれ以上溢れなくてすむ。
さっきまでいた杉崎を取り囲んでいたキャーキャー言ってた女子たちもいつの間にかいなくなってるし。
杉崎もその中の誰かとまぁ一緒に移動したんだろうな。
もし杉崎と同僚でもなく、違う部署でいつの間にか好きになっているような関係だったなら、あたしもあんな風に、自分からアピールするようなこと出来たんだろうか。
いや・・・ないな。
うん、まずあたしの性格上自分からアピールするというのがまずないんだよ。
結局自分に自信がある訳でもないのに、気に入った人には自分から行く勇気もない。
だけど待ってたって、そんなチャンス巡ってくるはずもない。
自分に自信なくても、少しは積極的な自分だったなら、少しは今までのあたしの人生も変わっていたのだろうか。
もしも誰かに今まで好きになっていてもらえたりしたら、こんな時もそんな勇気は出たのだろうか。
決して自分の外見も怠っている訳でもないけど、だけど、なぜかやっぱりどこか受け身でいてしまう自分だから、こんなことになってるんだろうな・・・。
今まではこんな風に美味しいモノを食べていられて、一人で過ごす時間も、全然楽しんでいられたのに。
杉崎を好きになってからは、杉崎といろんな時間を過ごすようになってから、あたしはそんな当たり前に出来ていた一人の時間を、いつの間にか物足りなくなってしまった。
何かあるごとに、杉崎を、杉崎と過ごした時間を想い出しては切なくなってしまう。
あぁ・・杉崎との想い出、ちょっと作りすぎたな・・・・。
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