純粋なるバカ達に捧ぐ

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 吉岡佑が髪を金髪に脱色して現れたのは高校三年生になってしばらく経ったぐらいの春だった。  それまでの彼は、真面目で、愚鈍でとても頼りなさげにいつも笑っていた。  佑のお兄さんと一緒に、三人でバカな事いっぱいした。アイスの取り合いで喧嘩したり、誰がおねしょの回数多いかでマウント取ったり。 「美玖ちゃん、美玖ちゃん」  幼稚園からの幼馴染の私を彼はいつまでもそう呼んでいたのに、それからの彼は私を「美玖」と呼ぶようになった。 「吉岡グレたね」 「そうかなぁ」  親友のアカネは彼、吉岡佑をしげしげみながら言った。あれからしばらくして今は紅葉の秋。佑の髪の毛はまるでそれと同化するようで、それが自己主張を無くした彼らしくも見えた。純粋なるバカな佑は子供の頃から私に約束していた事がある。それは。 「正義のスーパーヒーローになるんじゃなかったのかなあ」
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