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ここは西大陸の北の果てにある小さな小さな村。舗装された道のない鬱蒼とした森を抜けてやっとたどり着くような場所だ。部外者が来ることは滅多にない。 しかし、今日はどうやら違うようだ 「アラン、本当にこの先に人里なんてあると思う?やっぱり帰れる時に帰るべきじゃない?」 「うるさいな。ちゃんと手紙には場所が書いてあるし、御者も何も言わなかっただろ。」 「でも、御者めっちゃ渋い顔してたよね・・・・・・」 森の中を走る小さな馬車の中で長身の男たちが話している。心配そうに茶髪の優男がその森と同じ深い緑色の目で鬱蒼とした森を見ながら話す。それに面倒くさそうに答えているもう一人の男は、驚くほど美しかった。一緒に乗っている優男も一般的には美形であるが、その男といると霞んでしまうほどに。陶器のような白い肌とは正反対のつやつやとした漆黒の髪は少し癖があり、同じく黒々とした長いまつ毛が夜明け前の空を写し取ったような深い青色の大きな瞳を縁取っている。鼻筋はスッと通っていて、薄い唇は今は不機嫌そうに結ばれている。神様が人間を間違えて天使として作ってしまったような美しさだ。 「アラン、あのさやっぱり・・・・・・」 「しつこいぞレオ。俺はもう寝る。着いたら起こして。」 「はあぁぁ。はいはい。わかりましたよ。」
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