One call

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「そうか。じゃあマスクを取れば…」 「いえ!結構です!何にせよわたし日渡さんと結婚しませんので!」 「え、なん…」 「すみません!今日はちょっと用事がありまして!お先に失礼させていただきます!お疲れ様でしたっ!」 「あっ、日奈さ……」 腰を90度曲げてお辞儀をし、目を合わせずに立ち去った。 夜のビル街の中、歩幅を通常の二割増しにして勢いよく自宅へ進んでいく。 あまりに突然の告白で、上手にお断りすることができなかった。まだまだだな、わたし。 不本意にもさっきまでの日渡さんが、頭のなかを埋め尽くしている。コンビニやカフェの誘惑も気にならない程に。腹立たしいったらないわ。 あの人SVだよね?スーパーバイザーだよね?完全にわたしより上の存在じゃんね? 会社のビルの下でよくもまぁプロポーズなんてできたもんだよね?わたしの方が恥ずかしくてテンパったわ。 同じ部署の人に見られてたらどうすんだっつーの。 まさか断られると思ってなかったってこと?それはないよね。彼のどこにそんな自信が?っていうね。
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