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『日奈さんが大丈夫ならもっと近づきたいけど、嫌な思いはさせたくないからこの辺にしておくよ』
「…そうですか…」
『仕事終わりで疲れてるところありがとう。おやすみ』
「おやすみなさい…」
切れた電話。耳から離したスマホは、下ろした手から床に落ち、コトンと小さく音を立てた。
目を閉じて両手で耳を塞ぎ、何度もあの声を、あの言葉を思い返す。
──気持ち悪いなんて嘘。
日渡さんがしてくれること、口にする言葉、気持ち、全てが嬉しくて、でも嬉しいと思う自分がおかしいことを認めたくなくて、気持ち悪いなんて言ってはぐらかしていた。
もうさすがに、自分に言い訳するのも苦しいくらい。
日渡さんへの気持ちを誤魔化せない。隠せない。
自覚するのが嫌だなんて言ってられない。
わたし、日渡さんが好きだ。
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