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第一章 拾集
摂氏千六百度にもなる溶解窯の坩堝の中では、ガラスの素地が液状になり、オレンジ色に光っている。調合されたバッチの主な原料は珪砂、石灰、重曹、酸化金属、そして回収された廃瓶を砕いたカレットだ。
軍手を嵌めた手がその中へ吹き竿を入れ、どろどろとした素地を巻き取る。先端に留まる火の玉のような小さなガラス種は、下玉と呼ばれる。
下玉の形を整えるには、濡らした新聞紙を幾重にも重ねて作った紙リンを用いる。溶けた飴のように柔らかい塊は、まだ熱を持って光っている。
もう一度、下玉を坩堝の中に入れて溶けたガラスを巻き取り、一回り大きな上玉を生成する。何度か繰り返す間、決して手を止めてはならない。端正な作品にするには、常に一定の速度で回し続ける必要がある。
出来た上玉を型に嵌め、竿の反対側から息を吹き込み、さらに目的の大きさと形へ近付けていく。今回の作品は人気の高いタルグラスだ。片手で持てるほどの大きさになると、職人はその根元を金ばしでくくり、吹き竿から取り外せるようくびれを作った。
この時には既にガラスは冷め始めて、オレンジ色の光の塊から、透き通った姿が顔を出している。そこで、今度は素地を調合する坩堝とは別の、加熱用の成形窯で温め直す。この焼き戻しの工程は、およそ二十秒おきに繰り返される。
柔かさを取り戻した玉に木べらを宛て、平らにならすよう底面を作っていると、一人の職人見習いが駆け寄ってくる。同じく軍手を嵌めた手には、小さなガラス種をつけたポンテ竿を持っていた。
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